次の音を作る人のために。

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エンドウ.さんが語る、現代を生きる音楽家の権利意識とワークライフバランス【後編】

バンド「GEEKS」、クリエイターギルドバンド「月蝕會議」での活動のほか、「ももいろクローバーZ」「ヒプノシスマイク」「イヤホンズ」「少女歌劇レヴュースタァライト」など、様々なアーティストやコンテンツに楽曲を提供しているエンドウ.さん。

加えて、他アーティストのライブツアーへの参加、真空管アンプやエフェクターの設計、書籍の執筆、また俳優といった活動をおこないつつ、“今最も忙しいクリエイターのひとり”でありながら、著作権についても積極的に勉強されています。

そんなエンドウ.さんに、音楽業界で生きていくための権利意識の持ち方、時間との戦いのなかでクリエイティヴ力を発揮すること、また仕事とプライベートのバランスなどについてお伺いしました。

後編は、タイムマネジメント、仕事における音楽やSNSとの向き合い方、これからの音楽業界の在り方などについてお届けします。

前編はこちらです。

クリエイターを取り巻く環境はどんどん有利になってきてる

JASRACのほかにMPN、JMDなど、色々な団体に行かれてますが、因みに、質問攻めにする突撃先はどうやって調べたんですか?

問題を見つけた時、ですね。以前アニメ劇伴をやった時、「儲かるよ~」って友達の作家から聞いてたんです。テレビ放送で3か月毎週30分間流れるからねって。

「そんなすごいの、ウソ僕お金持ちになっちゃう!」

って思ってたんですよ(笑)。で、ドキドキしながら分配を待ってたら5万円くらいしか入らなくて(笑)。

おかしいな、他の仕事のほうが全然貰ってるって思って「こんなに低いんですが本当ですかこれ」ってJASRACに聞いてみたら、テレビ局からの利用報告がなかったことが判明したんです。分配調査依頼書っていうのを出すんですけど、こういうときにJASRACはちゃんと動いてくれるんです。

「エンドウ.さん、テレビ局からの利用報告がなかったのでカウントされてませんでした」
「えー!どうしたらいいですか」
「テレビ局は全部フィンガープリントで管理しているので、システムに引っかからなかったんですね」
「フィンガープリントってどこでやってくれるんですかね?」

ってなって。この件は無事に利用が確認できたんですけど、ここで問題が出てきて、それを調べるために動いたりしてました。

普通は印税計算書を受け取っても、疑問に持つこともあまりないと思うんですが…すごいですね。

読み方がわからないですしね。自分もたまたま気づけただけで。

自分自身でダブルチェックするのも大事だということでしょうか。

こういうことも起こりえるので、やっといた方がいいかなと思います。結構な金額になることもあるので。

フィンガープリントなどのシステムも日々アップデートされていることも知っておいたほうがいいと。

そうですね。ライブハウスで自分の曲を演奏しても自分に入らないみたいな問題が昔ありましたけど、実はJASRACのシステムも変わって今は貰えるようになっているんですよね。クリエイターを取り巻く環境はどんどん有利になってきてると思います。

実は皆さんの知らないところで、僕のようなある種うるさいミュージシャン達は声を上げていて。それで割とここ何年かで結構良い方向に変わってるんですよ。

文句ある人は自分で声あげていくべきだし、そうでもない人でも、ちゃんと自分で自分の権利を全部知っておくべきというか。

気にしないのが一番ストレスがない

表舞台でも裏舞台でもこれだけの活動をされていらっしゃいますが、タイムマネジメントに気を配っていたりするんでしょうか。

朝8時までに起きて夜1時ぐらいまで仕事してます。寛いだりするのが嫌いなのと、不安になるので(笑)、ずっと働いてます。ボーっとしたりないですし、テレビは1秒も見ないですし。

先ほど「不安になるので」と仰っていましたが、どのような不安があるのでしょうか?

来年は食えないかもしれないって常に思うようにしているので。今のうちに仕事いっぱいやっておこうとは思ってますね。

来た仕事は全て受けてらっしゃるんですか?

そうですね、お仕事で断ったことないと思います。どんなに安かろが期間短かろうが「やります!」って言ってやります。「分かりました!その代わりじゃ次もお願いします!」って。もう食いっぱぐれるのが怖くて(笑)。

やっぱり作家はどこまで行っても利用される立場なので。特に最初のキッカケは。

でもだんだんそうやって言ったことを全部ハイハイ言って受けてると、どんどん無理難題とかを言われるようになってくるので、そこは自分がコントロールしていかないと、使われるだけの存在になっちゃうんですよね。そこのバランスが大事ですね。

因みに他のクリエイターの活動が気になったりとかは…。

隣の芝が青く見える時期もあったんですけど、そういうのって無駄だし、自分にストレスを貯めるだけなので、だんだん気にしなくなって。

で、そう思うようになってから仕事が上手くいくようになったんです。やっぱり気にしないのが一番ストレスないなっていうことですね。そこに行き着きましたね。

過去の自分との比較はされたりしますか?

目標とか立てたことないし、もうひたすら来る仕事を頑張ってこなして、新しい仕事が得られるように頑張ってるだけですね。

好きな音楽やってますし、世間に認められたいっていうのはあまりないですね。自分のやってるGEEKSがこの世で一番かっこいいと思ってるんですけど、いまいち世間に認められていないので、「世間は何も分かってないんだな」って思うようにしてるので(笑)。

楽しく音楽で食えたらいいな、という感じですね。

音楽も楽しく作ることが大事ということですね。

なるべく楽しく作っていきたいなあと。で、時々豚カツを食いに行けるような贅沢ができればぐらいで(笑)。

みんなと同じことをしたらみんなと同じ作風になってしまう

創作活動におけるインプットやアウトプットについてはいかがでしょうか。

アウトプットは自分のライブですかね。自分でやってるGEEKSと月蝕會議と。

声優さんとか他のアーティストのバックバンドをする時は、普段自分がアーティスト活動してる分、裏方に徹したいなと。プレイに徹する事が出来てすごく楽しんでできています。

インプットはもう全くしないですね。読書ぐらいしかないです(笑)。読書とネットサーフィンぐらいしかもやることないんで 。

最近読んだ本で面白かった本はありますか?

最近良かったのは、恒川光太郎っていう人の作品が面白かったかな。あと「このミステリーがすごい!」っていう本屋大賞みたいな賞がありますけど、この賞関連は大体読んでます。

ミステリー好きなので、ランキングに入ったものは必ず読みつつ、本のレビューを見て、好きな作家の作風に似てるとか書いてあったらそれを読んでみたり。

常に自宅に未読書籍の塔ができているので、次はその塔から取って読んでいく感じです(笑)。

因みに小説や漫画から、例えば作詞などでインスピレーションを受けたりしますか?

作詞は結構ありますね、作曲は多分何も影響受けてないとは自分では思ってますけどね。

このジャンルが流行ってるから聴いてみようとかは…。

一切ないですね。何もない時はやっぱり、中高生の時から今まで溜まってる自分のプレイリストをずっと聴いてますから。

作曲は、その時その時自分が良いと思うものを出していくといった感じでしょうか。

職業作家さんはみんな新しいものを取り入れてると思うんですけど、みんながそうやってるんだったら僕はやめとこうと。

みんなと同じことをやったらみんなと同じ作風になって、そうしたら、ちゃんとした人には太刀打ちできない、同じ土俵では戦えないって思ってるので。

基本的にパンクバンド出身の変な作家なので、他人の真似はなるべくしないようにって。アクが強くなきゃいけないとも思うし、自分の作品に。

楽曲提供するときと自身の作品とで、あまり思考の切り替えがない感じでしょうか。

多くはないですけど、(自分の作風以外のオーダーも)来ますけどね。例えば“トロピカル・ハウス”でって言われたことがあるんですよ。「それを僕に頼む?」って(笑)。

でも「トロピカル・ハウスって何だ?」って色々聴いて、「こういう音色がこういう感じで入るとトロピカル・ハウスっぽいのか~」とか勉強して作るので、お仕事がインプットになってますかね 。

アーティストのツアー用にバンドでアレンジするとき、演奏する楽曲を聴くこともインプットになっていそうですね。

バックバンドでサポートするときは聴き込み方が違いますしね。曲をただ単に聴くだけじゃなくて、実際演奏するために曲を分析すると吸収度が全然違って、「こういうアレンジって死ぬほどあるな」とか、「ここでsus4いくの流行ってんだな」とか、そういうのが凄く勉強になりますね。

音楽漬けの毎日かと思われますが…音楽を忘れる時間ってありますか?

本読んでる時とかですかね。でも仕事以外の時音楽のことを一切考えないので、そんなに音楽漬けで困ってるわけでもないんです。だから無理に忘れようともしてないですね。

上手いバランスで音楽と付き合えてるとは思います。

因みに若い頃から欠かさず続けてきたことはありますか?

敢えて言えばものを大事にするとか(笑)。無駄遣いしない、一生もの以外はなるべく買わないとか、そのくらいですかね、こだわりとか全然ないですし。

でも昔から(自分で調べるより)人に聞いちゃった方が早いとか、足使ってフットワーク軽い方がいいなとかは思ってましたね。なるべく籠らないようにっていう心掛けもありますね。

ネットでは調べきれないことを足を使って動かして知ることができた、っていうことは多かったと思います。ネットのどこかに書いてあるんでしょうけど、ネットで調べるよりも手っ取り早いので、なるべく動くようにはしてます。

SNSとはどのように向き合っていますか?

SNS、全然好きじゃないんですけど、全部無くすほど度胸もなくて(笑)。プロモーションとか広報機能として持ってなきゃいけないなと思って、ツイッターインスタグラムをやってます。

でもSNSに必死になるのも意味がないなってことに気づいて、ここ数年はあまり依存せずに、いい感じの距離でやれてると思います。

あと数年前からFacebookを始めました。権利周りとかを色々な大人の人達と話すようになったら、「お仕事の人達はこんなにFacebookやってたの?」って驚いて。

特に権利周りについては一般のSNSよりFacebookでアピールした方が実益に繋がることに気付いて(笑)。

業界に関わる全ての人達が問題を理解したうえで、それぞれの持ち場をやるべき

いやしかし、来た仕事をすべて受けつつ、権利周りについてもこれだけ動いてらっしゃるのは、本当に凄いです…!

全部自分の利益のためです(笑)。あとは後輩ですよね。

「この先あの小僧たちがずっと食えるのか?」

って。僕の並びの奴らはライバルなので行き倒れてくれてくれればいいので(笑)、その下の若手ですよね。彼らがどうにかなれば、自分に何か返ってくるかもしれないし(笑)。

勿論業界内で予算的なものが圧縮されてるからだとは思うんですけど、若手はどんどん食えなくなってる。チャンスがある時代にもなってるはずなんですけどね。

CD黄金時代や、さらに上の昭和の作家大先生たちから当時の話を聞いてると、今の感覚からするとため息が出るような良い時代だったりするんですけど、現状はちょっとあまりに可哀そうかなと。音楽で食おうっていう気も削がれてきちゃいますからね。

若手の状況、権利処理の状況、予算的な状況などの現状を、業界全体できちんと再確認する必要があるタイミングなのかもしれませんね。

もうJASRACの説明不足ってだけじゃない。業界も、自分たちクリエイターの理解不足も認知不足もあると思います。

アーティストとかディレクターとか出版社とかレコード会社とか、業界に関わっている全ての人達が、お金の問題とかを理解したうえで、それぞれの持ち場をやるべきだと思うんです。でもアーティストにお金の話を一切しないってのは結構あるじゃないですか。

普通の勤め人だったら、もうちょっと自分の給料の明細って分かってると思うんです。どんなことで収益を上げて生きてるか、とか。

ミュージシャンやアーティストは漠然とし過ぎてるかなと思います。だからミュージシャンやってるんでしょうけど(笑)。

この手の問題の話をすると、みんな「今度ミュージシャンたち集めて詳しく話してよ!」って言われることが多くて、そういうのが積み重なって、2019年から一般社団法人日本音楽作家協会(MCA)の会長・代表理事をやってます。

ミュージシャンやクリエイターが少しでも自活できるように相談に乗ることも結構多いですね。

最後の質問です。毎日「おはらっきー!」とツイートされていますが、どういう意味なのでしょうか?

単純にやめられなくなったからですね(笑)。もう毎日必ず9年ぐらい言ってると思うんですけど(笑)。

『らきすた!』っていうアニメ発祥で、作品関連のラジオ番組で『らっきー☆ちゃんねる』っていうのがあって、「おはらっきー!」「ばいにー!」って挨拶があるんですけど、そこからきてます(笑)。

あと久々にGEEKS聴こうと思って僕のアカウント見た人が、何か昔のエンドウ.さんと違うってなったら嫌かな、と思って。「エンドウ.さんまだ「おはらっきー!」って言ってる!」って思ってくれたらいいなと(笑)。

自分も、自分が作る音楽も、なるべく変わりたくないっていう思いもあるのでやってます。

Interview & text: 岩永裕史(Soundmain編集部)

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